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フォルダ漁ってたら出てきた。
別に何が面白いって話じゃないので時間つぶしにどうぞ。


■内容■

現代パラレルバルフレア×アーシェ。
サイトのバカップルな二人とは別人。
多分、これを書いた時期に海外SS読んでて、Yahoo!翻訳がAsheをこう翻訳して下さった辺りで思い付いたんだと思う。

+ + +


いつもなら絶対に立ち寄らない、存在を意識したことすらないそんなサイトを閲覧したのは、ほんの気まぐれだった。
地域別に部屋が分けられているチャット。そのトップページには「住人同士が交流を深めて地域を盛り上げよう」との明るく健全なスローガンが掲げられているが、内実はいわゆる出会い系だ。
自分が住んでいる地域を選択すると、チャットの画面が現れた。入室はしないまま、数人の書き込みが入り乱れた会話ログを眺める。タイムスタンプは数時間前だ。
今は、誰もいないのだろうか。
拍子抜けした気分で画面を見やった時、気付いた。

ROM:2人

──どきん。
鼓動が跳ねた。
今、この画面を見ている人間が、自分の他にもう一人いる。
と、チャットの画面が更新された。一定時間ごとに自動更新される設定になっているのだ。反射的に会話ログに視線をやって、息を呑む。新しい文章が表示されていた。

炎:そこにいる人、暇なら話さない? 当方男、女の子大歓迎


* * *


灰:こんにちは
炎:こんにちは。入ってきてくれたってことは、女の子?
灰:ええ
炎:ようこそここへ
炎:ところで、変わった名前だな
灰:そう?
灰:あなたも漢字一文字だったから
炎:合わせてくれた?
灰:そういう物かと思った
炎:つれないねぇ
炎:こういうところ、初めて?
灰:分かる?
炎:そりゃあ
灰:あなたは慣れてるの?
炎:それを肯定するのは、俺のプライドに関わる
灰:何故?
灰:あ、分かったわ
炎:俺がもてない男みたいだろ
炎:おい、早く言えよ
炎:てか聞くな
灰:ごめんなさい
炎:もしかして、中学生とかじゃないよな
灰:違うけど?
炎:ならよかった
灰:何故?
灰:返事がないけれど、どうしたの?
炎:悪い。またすぐ書き込みがあるかと思って待ってた
炎:中学生相手じゃ犯罪だろ
灰:そうなの?
炎:俺、22だぜ
灰:それは確かにまずいかもしれないわね
炎:あんたは? 何歳?
灰:19
炎:安心した
灰:話を戻すけれど、あなたも変わった名前じゃない?
炎:そうか?
灰:どうして炎なの?
炎:可愛い女の子捕まえようと思って、燃えてるから
灰:そのままね
炎:分かりやすくていいだろ
炎:そういうあんたは、もしかして燃え尽きちゃったわけ?
灰:まあ、そう
灰:今日、失恋したから
炎:へぇ。かわいそーに
灰:本当にそう思ってる?
炎:いや。あんまり
炎:女の子が一人フリーになれば、俺のチャンスがその分増える
灰:なかなか素敵な考え方ね
炎:で、次の恋を探そうと思ってここに来たわけか
灰:そんなつもりじゃなかったの
灰:見るだけにしようと思ってたんだけど
炎:何で入ってきたんだ?
灰:話しかけられちゃったから
灰:他に誰もいなかったし、答えないのも悪いかと思って
炎:生真面目だねぇ
炎:真面目ついでに、このチャットの目的、全うしないか?
灰:どういうこと?
炎:このチャットが何のために存在してるのかは知ってるだろ?
灰:えぇ、まあ
炎:会おうぜ
灰:話の展開が早いわね
炎:基本的には、お互いその気で来てるわけだし
灰:気が合うかどうかも分からないわよ
炎:俺は、あんたを気に入った
灰:私はあなたのこと、まだ分からないわ
炎:どんな男か、興味ない?
灰:少しは
炎:だったら、会ってみるのが一番手っ取り早い
灰:そうかしら
炎:週末とか、予定ある?
灰:予定はないけど
炎:じゃあ明日の土曜13時、○○駅の改札付近で。分かる?
灰:行くと言った覚えはないわよ
炎:来いよ。燃え尽きちまった心に火をつけてやるぜ?
灰:何それ。口説いてるつもり?
炎:つもりじゃなくて、口説いてる
灰:寒いわ
炎:だから、暖めてやるよ
灰:そういう意味じゃないわ。嫌味も分からないの?
炎:あえて気付かないふりをしたってのに
炎:冗談はさておき、せっかくの週末を一人で過ごすなんて勿体ないだろ
灰:それは、まあ
炎:だろ? あんたの充実した週末のために、協力してやるって
灰:恩着せがましいわね
炎:じゃあ、あんたのためじゃなくて俺のため
炎:俺の充実した週末のために、協力しろよ
灰:それが人に物を頼む態度?
炎:私めに、どうぞあなたの貴重な時間をお与え下さい
炎:でいいか?
灰:最後の一言が余計よ
炎:注文がうるさいな
灰:交渉決裂ね。さよなら
炎:ちょっと待て
炎:おい、いるか?
灰:いるわよ。心を入れ替えて頼む気になった?
炎:なったなった。やり直させろ
灰:これが最後よ
炎:私めに、どうぞあなたの貴重な時間をお与え下さい
灰:コピペ?
炎:ちゃんと打ち込んでるっつーの
灰:そんなの私には分からないもの
灰:ちゃんと新しい文章にしてよ
炎:来てくれ。頼む
炎:おい。返事は
灰:今度はまた随分と簡潔ね
炎:不満か
灰:まあいいわ。ギリギリ合格
炎:じゃ、明日
灰:ちょっと待って
灰:場所は分かるけど、あなたの顔が分からないわ
炎:人待ち顔で立ってるいい男がいたら、それが俺
灰:大層な自信ね
灰:でも、それじゃ分からないわ
炎:なら、俺から声を掛ける
炎:あんたの特徴は?
灰:人待ち顔で立ってるいい女がいたら、それが私よ
炎:言うねぇ
炎:分かった、俺の名誉に賭けて探し当てる
灰:期待してるわ


* * *


やっぱり、来なければよかった。
駅の改札口近く、コンコースの太くて丸い柱に寄りかかりながら、アーシェは溜息を吐いた。
視線を上げて、駅の時計を見る。一時半を大分回っている。
待ち合わせの相手は、来ない。のこのこやってきた自分が馬鹿みたいだ。
もう一度溜息を吐きながら、しかし立ち去る踏ん切りが付かない。約束を破られたのだとは思いたくなかった。──そもそも、約束などとは呼べないものだったのかもしれないけれど。
あともう少し。そうやって立ち続けていればいるほど、柱から離れて歩き出すのが難しくなる。長いことここに佇んだままの自分を、周りはどう見ているのだろう。待ちぼうけを食った可哀想な女?
人波を眺めているのが居たたまれなくなって、アーシェは俯いて唇を噛んだ。

「アッシュ?」
声を掛けられて、アーシェははっと顔を上げた。見下ろしているのは、自己主張の激しい大振りのピアスを着けた、端整な顔立ちの若い男。
自分の愛称のようなその呼び名を知っている人間は、ごく限られている。しかし、今目の前にいるこの男に、アーシェは見覚えがなかった。
「……アッシュ?」
呼ばれた名前を、語尾を上げた疑問形で反復する。人違いなら、これで相手もそのことに気付くはずだ。
しかし、
「あんたのことだろ?」
男はアーシェを見下ろしながら自信ありげに笑みを浮かべた。
「……あなたは?」
この男は自分を知っている。分かったが、明確に肯定するのは避けて逆に誰何した。男が軽く肩を竦める。
「バルフレアだ」
「バルフレア」
繰り返したその名から、イメージが浮かぶ。
「……炎」
「ん?」
呟きを聞き取れなかったのか、男が問い返す声を上げた。それに、アーシェは緩く首を振る。
「何でもないわ」
灰(ash)と炎(flare)。関係が深いと言うべきか、対照的と言うべきか。
そんなことを思って、アーシェはそこで考えることをやめた。
「……どこへ行くの?」
アーシェの言葉に、男が片眉を上げた。その反応に、何を今更、と思う。
声を掛けてきた見知らぬ男に付いていく。それはひどく浅ましい行為だ。けれど、よく知りもしない女に声を掛ける、その行為も、同じくらい浅ましい。
自分とこの男は同じ。下手に出る必要も、怯む理由もない。
男が、思案げな顔をした。組んだ腕の指先で、ピアス同様、自己主張の激しい派手な指輪が光る。
「──あんた、昼は?」
「済ませたわ」
「俺はまだなんだ。付き合えよ」
「いいわ。行きましょう」
寄りかかっていた柱から離れる。と、エスコートのつもりか、男が肩に手を回してきた。
──あぁ、やっと。
歩き出しながら、アーシェは肩越しに丸い柱を振り返った。
やっと、歩き出せる。



水銀灯の光が、暗い空に浮かび上がる。
公園の遊歩道を歩いていると、少し先のベンチに誘われた。頷くと、笑みを返される。闇に沈んで不確かな足元をフォローするように、自然に手が繋がれる。
「今日は、楽しかったわ」
水辺に向けて設置されたベンチに腰を下ろして、アーシェはバルフレアを見上げた。アーシェの隣に腰を下ろしながら、バルフレアが笑う。
「気晴らしになったか?」
「え?」
「熱いぞ」
近くの自動販売機で買ってきたばかりの缶飲料が手渡された。その予想外の熱さに慌てて、アーシェは急いでハンカチで缶をくるむ。
「フラれたんだろ?」
アーシェはハンカチを摘んでいた手を止めた。ぽかんとした顔で、バルフレアを見やる。
「どうして知っているの」
「さあ。どうしてかな」
自分の分の缶を傾けながら、バルフレアがこちらを見返す。缶で半分隠れたその顔を見つめて、アーシェはふぅ、と息を吐いた。
「……聞いてたの」
「偶然な」
空になったらしい缶を、バルフレアが屑籠に投げ入れる。静かな公園に、からから、とけたたましい音が響いた。
「まぁ、過去は捨てて、未来だけを見ていけ……ってな」
「そうね。そうすべきなんだわ、きっと」
「じゃあ、未来の話をしようぜ。明日は? あいてるか?」
唐突な提案に、アーシェはバルフレアを見やる。
「……何それ。口説いてるつもり?」
「つもりじゃなくて、口説いてる。あんた、俺にしとけよ」
に、と笑いかけられ、アーシェは一度開きかけた口を、閉じた。そして、殊更に溜息を吐く。
「何だよ」
「何か、言ってやろうと思ったの」
「うん?」
「でも──残念なことに、非常に魅力的な提案だわ」
心底悔しそうな顔をしたアーシェに、バルフレアが笑った。
「アッシュ」
バルフレアの指が、アーシェの髪を軽く引く。
「……ねぇ」
それは、私の本当の名前じゃないのよ。
言いかけた言葉は、放たれる前に封じられてしまった。


* * *


炎:誰か、話そうぜー
通りすがりの常連:何お前、またすっぽかされたの?
炎:うるせぇ
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