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心浮き立つお題を見つけたので勢い余って書きました。
お題配布元はこちら→ http://canna.4.tool.ms/
■内容■
バルアシェED後。バルフレアが病んでます。苦手な方はご注意を。
心浮き立って書いたけど心荒む内容。
お題はラストに。
+ + +
タイトルはフォント装飾してみました。
右寄せにして明朝体にしてサイズ大きくして字体斜めにして色も変えたけど、携帯で効くのはどの程度だろうか。
右寄せとサイズが効けば御の字?
お題配布元はこちら→ http://canna.4.tool.ms/
■内容■
バルアシェED後。バルフレアが病んでます。苦手な方はご注意を。
心浮き立って書いたけど心荒む内容。
お題はラストに。
+ + +
タイトルはフォント装飾してみました。
右寄せにして明朝体にしてサイズ大きくして字体斜めにして色も変えたけど、携帯で効くのはどの程度だろうか。
右寄せとサイズが効けば御の字?
+ + +
「そういうわけだから。ここまでにしましょう」
つい先刻までの、甘い空気はどこへやら。
寝台を降り、薄衣一枚を羽織りながら、アーシェは言った。
「異論はないわよね。初めからそういう約束だったし、そもそもこの関係は正しい物ではなかったわ。あなたには恩義があるから私も無碍には出来なくて、あなたの我が儘をここまで許してしまったけれど」
「俺の?」
問い掛けた声と一緒に紫煙が漏れる。見咎めて、アーシェは幽かに眉を顰めた。
煙草も、それを吸う場所が寝台の上なのも、気に入らないのだろうことを知っている。だがこんな話は、吸いながらでもなければ聞いていられない。
「あなたの、よ」
煙草については触れず、アーシェは一言だけ答えた。
寝台を降りた時からこちらを向いている背中が、数歩の距離を移動する。硝子の水差しからグラスに水を注いで、一口だけ、飲み込んだ。
「私はダルマスカの女王。私は、ダルマスカのためだけに存在する」
誰に言い聞かせた物か、アーシェは自明の事実を口にした。
そう。自明だ。そんなことは、言われずとも分かっている。
初めて出会った時からそうだった。アーシェの瞳はダルマスカしか見ていなかったし、アーシェの足はダルマスカのためにしか動かなかった。口を開けば出てくる言葉はダルマスカのため、細腕で剣を振るうのもダルマスカのため、この腕に抱かれたのもダルマスカのため。
恩義がある。アーシェはそう表現したが、本を正せば脅迫めいた取引だ。
あの時アーシェにはシュトラールが、ひいてはこの俺が、必要だった。対価は話が付いていた。そこから尚、もう一歩を要求した。それを、アーシェは呑んだ。呑まざるを得ないと知っていて、付け込んだ。
「そのあんたが、一人の男の物になるって?」
揶揄する口調に、アーシェは不快げに細めた瞳で振り返った。
「私が誰かの物になるのではないわ。私が、次のダルマスカ王の父親を選んだの」
見縊らないで。
きっぱり言い放ったその言葉に苦笑する。それが心底からの思いなら、相手の男も気の毒だ。
「ご立派なことで」
殊更に拍手してみせたその素振りを、アーシェは睨んだ。何か言いたげに唇を開きかけたが、それは呑み込んで、用意していたのだろう言葉を改めて吐き出す。
「──繰り返しになるけれど、あなたには恩義があるわ。それに、いくらかの時間を共に過ごした分の情も。だから、御礼はします」
「御礼、ねぇ。慰謝料か手切れ金の間違いじゃないのか?」
「あなたがそう思うのならそう取ればいいわ。望む物を言って。出来るだけのことはします」
寝台の傍らに立って、アーシェはこちらを見下ろす。最後の煙を吐きながら煙草を灰皿に押し付けて、薄鈍を見返した。
「望みなら、ひとつだ」
「何です」
問うたアーシェの手を掴み、寝台に引き倒す。息を呑んだような、短い悲鳴が上がった。
「──お前が欲しい」
落とした囁きに、アーシェは驚きはしなかった。どうして分からないのだ、そんな非難めいた、侮蔑混じりの瞳がこちらを睨み上げる。
「それが出来ないから代わりの物を、と言っているの」
「他の何かに代わりが務まるのなら、そいつをダルマスカにくれてやれ」
寝台に押し付けた、華奢な腕をきつく掴む。アーシェが瞳を歪めた。
「バルフレア」
どうして分かってくれないのだ。多分に感情の滲んだ声が呻く。
分かって堪るものか。跡よ付けとばかりに握り締めた指に力を込める。
ダルマスカを取り戻すためだ。言い聞かせた、脅迫めいた取引。
弱みに付け込んだ卑怯な振る舞いは、だが拒絶されないと知っていた。それは「理由」だった。自分の全てはダルマスカのため、そんな揺るぎない信念を持つアーシェには、理由が必要だったのだ。
この関係は私欲に溺れた物ではない。他でもないダルマスカのためなのだと、胸を張って主張できる正当な理由が。
「……攫われたのだと、言えばいい」
アーシェが視線を上げた。細い手首を解放し、手のひらで、手のひらを掴む。
「お前が望むなら、今この場から連れ去ってやる。いつか誰かに見咎められたら、脅されて攫われたんだと言えばいい。全ての罪は俺が背負う。お前はただ、この手を取れば」
「バルフレア」
遮られ、言葉を切った。アーシェが、ゆるりと頭を振る。
「もう決めたの」
真っ直ぐに見つめる瞳。見つめ返して、揺るがないのだと知った。
知っていた。アーシェがダルマスカの物なのではない。ダルマスカが、アーシェの中核を成しているのだ。切っても切り離せない。それを失うだけで、全てが覚束ない。
「……アーシェ」
腑抜けた声だと、自分で思った。同じように力の抜けた腕でアーシェを抱き締めると、柔らかく抱き返されるのを感じた。
「バルフレア」
呼ぶ声も。それを漏らす唇も見つめる瞳も触れる髪も、華奢な首も細い肩も腕も手も指も、しなやかな背も腰も脚も爪先までもが、全てがこの手の中にある。
なのに、手を離したが最後、その全てが他の誰かの物になる。
耐えられない。
「……だったら」
視線の先に、アーシェの白い手がある。そこに、手のひらを重ねた。
細い指を、指でなぞる。今は何もない。かつてそうだった、そしてこれからまた、アーシェが他の男の物なのだと見せつける指。
「これだけでいい」
その一本に、指先を絡ませる。アーシェが、訝る視線を向けた。
「いいだろ? たったこれっぽっちだ」
指先でそっと、包んだ指を愛おしむように撫で擦る。
言葉を、仕草を、正確に理解したのだろう。アーシェの顔が、ゆっくりと強張っていく。
その顔を見下ろして、笑った。
「──分かってるさ。お前の全てを手に入れることは出来ないんだろ? だから、」
「そういうわけだから。ここまでにしましょう」
つい先刻までの、甘い空気はどこへやら。
寝台を降り、薄衣一枚を羽織りながら、アーシェは言った。
「異論はないわよね。初めからそういう約束だったし、そもそもこの関係は正しい物ではなかったわ。あなたには恩義があるから私も無碍には出来なくて、あなたの我が儘をここまで許してしまったけれど」
「俺の?」
問い掛けた声と一緒に紫煙が漏れる。見咎めて、アーシェは幽かに眉を顰めた。
煙草も、それを吸う場所が寝台の上なのも、気に入らないのだろうことを知っている。だがこんな話は、吸いながらでもなければ聞いていられない。
「あなたの、よ」
煙草については触れず、アーシェは一言だけ答えた。
寝台を降りた時からこちらを向いている背中が、数歩の距離を移動する。硝子の水差しからグラスに水を注いで、一口だけ、飲み込んだ。
「私はダルマスカの女王。私は、ダルマスカのためだけに存在する」
誰に言い聞かせた物か、アーシェは自明の事実を口にした。
そう。自明だ。そんなことは、言われずとも分かっている。
初めて出会った時からそうだった。アーシェの瞳はダルマスカしか見ていなかったし、アーシェの足はダルマスカのためにしか動かなかった。口を開けば出てくる言葉はダルマスカのため、細腕で剣を振るうのもダルマスカのため、この腕に抱かれたのもダルマスカのため。
恩義がある。アーシェはそう表現したが、本を正せば脅迫めいた取引だ。
あの時アーシェにはシュトラールが、ひいてはこの俺が、必要だった。対価は話が付いていた。そこから尚、もう一歩を要求した。それを、アーシェは呑んだ。呑まざるを得ないと知っていて、付け込んだ。
「そのあんたが、一人の男の物になるって?」
揶揄する口調に、アーシェは不快げに細めた瞳で振り返った。
「私が誰かの物になるのではないわ。私が、次のダルマスカ王の父親を選んだの」
見縊らないで。
きっぱり言い放ったその言葉に苦笑する。それが心底からの思いなら、相手の男も気の毒だ。
「ご立派なことで」
殊更に拍手してみせたその素振りを、アーシェは睨んだ。何か言いたげに唇を開きかけたが、それは呑み込んで、用意していたのだろう言葉を改めて吐き出す。
「──繰り返しになるけれど、あなたには恩義があるわ。それに、いくらかの時間を共に過ごした分の情も。だから、御礼はします」
「御礼、ねぇ。慰謝料か手切れ金の間違いじゃないのか?」
「あなたがそう思うのならそう取ればいいわ。望む物を言って。出来るだけのことはします」
寝台の傍らに立って、アーシェはこちらを見下ろす。最後の煙を吐きながら煙草を灰皿に押し付けて、薄鈍を見返した。
「望みなら、ひとつだ」
「何です」
問うたアーシェの手を掴み、寝台に引き倒す。息を呑んだような、短い悲鳴が上がった。
「──お前が欲しい」
落とした囁きに、アーシェは驚きはしなかった。どうして分からないのだ、そんな非難めいた、侮蔑混じりの瞳がこちらを睨み上げる。
「それが出来ないから代わりの物を、と言っているの」
「他の何かに代わりが務まるのなら、そいつをダルマスカにくれてやれ」
寝台に押し付けた、華奢な腕をきつく掴む。アーシェが瞳を歪めた。
「バルフレア」
どうして分かってくれないのだ。多分に感情の滲んだ声が呻く。
分かって堪るものか。跡よ付けとばかりに握り締めた指に力を込める。
ダルマスカを取り戻すためだ。言い聞かせた、脅迫めいた取引。
弱みに付け込んだ卑怯な振る舞いは、だが拒絶されないと知っていた。それは「理由」だった。自分の全てはダルマスカのため、そんな揺るぎない信念を持つアーシェには、理由が必要だったのだ。
この関係は私欲に溺れた物ではない。他でもないダルマスカのためなのだと、胸を張って主張できる正当な理由が。
「……攫われたのだと、言えばいい」
アーシェが視線を上げた。細い手首を解放し、手のひらで、手のひらを掴む。
「お前が望むなら、今この場から連れ去ってやる。いつか誰かに見咎められたら、脅されて攫われたんだと言えばいい。全ての罪は俺が背負う。お前はただ、この手を取れば」
「バルフレア」
遮られ、言葉を切った。アーシェが、ゆるりと頭を振る。
「もう決めたの」
真っ直ぐに見つめる瞳。見つめ返して、揺るがないのだと知った。
知っていた。アーシェがダルマスカの物なのではない。ダルマスカが、アーシェの中核を成しているのだ。切っても切り離せない。それを失うだけで、全てが覚束ない。
「……アーシェ」
腑抜けた声だと、自分で思った。同じように力の抜けた腕でアーシェを抱き締めると、柔らかく抱き返されるのを感じた。
「バルフレア」
呼ぶ声も。それを漏らす唇も見つめる瞳も触れる髪も、華奢な首も細い肩も腕も手も指も、しなやかな背も腰も脚も爪先までもが、全てがこの手の中にある。
なのに、手を離したが最後、その全てが他の誰かの物になる。
耐えられない。
「……だったら」
視線の先に、アーシェの白い手がある。そこに、手のひらを重ねた。
細い指を、指でなぞる。今は何もない。かつてそうだった、そしてこれからまた、アーシェが他の男の物なのだと見せつける指。
「これだけでいい」
その一本に、指先を絡ませる。アーシェが、訝る視線を向けた。
「いいだろ? たったこれっぽっちだ」
指先でそっと、包んだ指を愛おしむように撫で擦る。
言葉を、仕草を、正確に理解したのだろう。アーシェの顔が、ゆっくりと強張っていく。
その顔を見下ろして、笑った。
「──分かってるさ。お前の全てを手に入れることは出来ないんだろ? だから、」
薬指だけでいい
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